7月19日 午前7:30、名古屋空港
わが子を一人でアメリカへ送り出す親の不安は想像するに及ばない。そんな両親の心配をよそに、期待と興奮で遠足の前日のように寝付きが悪かったせいか、寝ぼけ眼こすりながら名古屋空港に登場した成田敦博15歳。名古屋空港から成田空港へ飛行機で移動。集合場所には他4人の日本人小・中学生と日本人ガイドの大人がひとり。不安と期待に胸をふくらませ、飛行機に乗り込み、いざ、サンフランシスコへ出発。
「Hi!ヒロ!!」
7月19日 午前11:00 SFO空港に到着した直後、大きなシボレーのバンから、これまた大きな体つきのアメリカ人男性の笑顔があらわあれた。どうやら彼、慣れない飛行機に少々ぐったりしたこの日本人の少年達を出迎えにきたらしい。簡単な挨拶をすませたあと、バンに乗って空港からほど近い民家に到着。少しの間待っていると、今度は小さなホンダのセダンから降りてきた女性がこちらに向かってくる。嬉しそうな顔をして近づいてきた彼女がどうやらアツヒロのホストマザーらしい。車に乗るようにすすめられ、おずおずと後部座席に座ったアツヒロに彼女が一言。
「噛みついたりしないから私の横に乗りなさい!」
…そのようなことを英語で言われ、助手席に座り直す。
「この車に乗ったら、僕はどこへ連れてかれるんだろう…」
そんな不安を持ったのはもちろん本人だけではない。
空の旅の余韻に浸り、この先2週間の抱負を語り合う間もなく、あっけにとられたまま見送った一同。
ま、そんなもんだ。とにかく頑張れ、アツヒロ。
受けた講座は「アート」と「スポーツ」
7月21日 月曜日から、さっそくサマープログラムがスタート。ステイ先から学校までの往復は車で15分程度。朝食を食べた後、ホストファミリーが車で送り届けてくれる。地中海性気候独特のカラッとした気候の中、自然豊かな景色を眺めおしゃべりをしながらドライブ、のはずが、ただひたすら車に酔った。そんな少々苦い思い出もあるものの、見るモノ聞くモノ全てが新しく、戸惑うことより目を輝かせることの方が多い毎日がはじまった。
床一面に絵の具で汚された部屋で突然手渡されたモノは、キャンバスと筆と赤色の絵の具。描くモノは自由。テーマは決まってきるものの生徒たちの創造力をかきたてながら、ヌエーバ流のアートというものを学ぶ。
スポーツの時間は、きれいな芝のグランドで球技。初対面で言葉も通じない外国人とどうやってスポーツをするのか…と不安に感じつつ、ひとたびグランドに出ればそこに国境はない。あっという間にうち解け、アツヒロの表情もずいぶん明るくなった。
休日はホストファミリーと映画。
「アメリカ人は日本人と笑うツボが違う」アツヒロはホストファミリーと一緒に最新の映画を見ながらそうつぶやいた。日本にいるより早めに映画が上映されるから、少し得した気分だ。…と、こんなことを感じられるのも、心に余裕が出てきた証拠なのか、とにかく楽しくてしょうがない毎日。毎日のように良い天気が続くのでホストファミリーの庭にあるプールで泳いだが、チョット寒かった。「そういえば、お母さんどうしてるだろう…たまにはメールを打ってみるか」と思いつつも申し訳ないがそんなこともすっかり忘れていた。今度来たときはヨセミテ国立公園にも行きたい。もっと広いアメリカを自分の目で確かめたい。そんな欲望さえ沸いてきた。
あっという間に過ぎた2週間
サマープログラムが終了してSFO空港へ向かう車に、今度は自分から助手席に乗り込んだ。
当然のように、お世話になったホストファミリー、ヌエーバの先生、新しい友達との別れは悲しい。
「絶対に、もう一回来るぞ!」
そう心に誓って、サンフランシスコの空港を後にした。
成田敦博、どこにもない15歳の夏。